カプサイシンの効用と注意点

カプサイシンには、体脂肪を燃焼させてエネルギー消費を促すことにより肥満防止の効果があったり、胃腸を健康にしたり、育毛に効果があったりと美容と健康に関して嬉しい効果がたくさんあります。

カプサイシンの特徴

「カプサイシン」は唐辛子の辛みとなっている成分です。カプサイシンは油やお酒、酢に唐辛子を浸けると溶け出しやすいですが、水には溶けだしにくいという性質もあります。唐辛子を生の状態で食べても吸収率が悪く、10%程度しか吸収されません。しかし、茹でたり油と一緒に摂取すると吸収率を30~70%に上げることができます。カプサイシンを効率よく摂取したいのであれば、ラー油や豆板醤などの調味料を利用するといいでしょう。

そして誤解されやすいですが唐辛子の赤い色素成分はカプサイシンではありません。「カプサンチン」という別の色素成分です。 

カプサイシンが血圧を下げる理由

マウスでの実験ではカプサイシンを添加したエサを与え続けたところ、5カ月経ったころに血圧が低下したという結果が出ており高血圧の治療の手助けになるのではと注目されています。

また、カプサイシンには副腎皮質にアドレナリンを出すように指示する働きがあります。アドレナリンは脂肪燃焼効果のあるリパーゼを出したりするのですが、血圧を下げるという効果も期待できます。唐辛子でカプサイシンを摂取するぐらいの量であれば逆に血圧を下げることにつながります。カプサイシンには血管を拡張させる作用があります。

また、カプサイシンはコレステロール値を下げる作用もあるので、コレステロールが血管の壁に付着するのを防ぐ効果も期待できます。高血圧の原因が肥満にある場合、カプサイシンのアドレナリンにより代謝をよくする働きも高血圧の改善に役立ってくれます。

カプサイシンには体温を上げて発汗を促し、脂肪を燃焼させるという効果が期待できますが、これはすなわち代謝をよくすることにつながるということです。代謝がよくなれば消費されるカロリーも増えることになり、血圧も減少していきます。

■カプサイシンのその他の働き

・冷え性や便秘の改善のほか疲労回復効果も

カプサイシンは末梢血管まで血流を良くしてくれる働きがあるので、身体を温めることができ冷え性の改善が期待できます。新陳代謝が活発になることで血行が促進され老廃物の排出を促すことにより、疲労回復効果も見込めます。カプサイシンの持つ辛みは唾液や胃液の分泌を盛んにするため食欲を回復させる効果ももたらします。

胃液が分泌されることにより胃が保護され、必要な栄養をしっかりと吸収することにもつながります。さらにカプサイシンには整腸作用があり、便を排出するために必要なぜん動運動を促進することによって、便通改善にも役立ってくれます。

・鎮痛効果は湿布やクリームにも利用されている

カプサイシンには鎮痛作用があるので、痛みに対処するための湿布やクリームの成分に使われています。

・胃粘膜保護により胃潰瘍を発症しにくくなる

感覚神経を介すことで胃酸の分泌が抑制されることにより、胃粘膜の保護作用が得られます。この作用によりカプサイシンを少量摂取すると胃潰瘍になりにくくなることが動物試験で分かっています。ただし、カプサイシンを大量摂取すると保護作用がなくなるので注意が必要です。

・代謝や血行促進により育毛効果も

カプサイシンの代謝改善や血行促進は育毛効果ももたらしてくれます。また、皮脂の過剰分泌を抑えることにより毛穴の詰まりが解消するという効果も期待できます。

・さまざまな効果が高じて美肌を目指せる

カプサイシンはこれまで述べてきたように発汗作用があり老廃物の排出を促し、疲労回復効果や便秘解消効果が得られます。アドレナリンの分泌を促すことでストレス解消にもつながるので、肌がきれいになっていくという女性にうれしい効果が望めます。さら唐辛子にはビタミンCやビタミンEがたくさん含まれており、肌の細胞の老化防止にも役立ってくれアンチエイジングのためにも利用したい香辛料です。 

カプサイシンの摂り過ぎには注意

カプサイシンは過剰摂取すると健康に被害をもたらすこともあるので、摂取量の限界量を超えないようにしましょう。1回の食事量での摂取目安は体重1kgに対して1日5mgです。体重が60kgある人の場合、300mgになります。ただし、これは伝統的な食事における推定最大摂取量なので、食べ慣れていない人や辛みに対して敏感に反応してしまう人はもっと減らすようにしましょう。

カプサイシンの過剰摂取で起きる症状としては目であれば流涙症、鼻であれば鼻液漏です。

さらに排尿障害や胃食道逆流症も引き起こします。この他にも粘膜の炎症に吐き気、嘔吐、高血圧が起きることもあり、これらの症状は子どもなどが特に発症しやすいので気をつける必要があります。

カプサイシンには致死量も存在し、体重が50kgの人であれば3,000~3,750mgの摂取で命の危険が生じてきます。一般に市販されている卓上の一味唐がらしに換算しますと67瓶というとてつもない量になり、通常の摂取においては全く心配はいりません。

あまりに辛い料理を食べ過ぎると、舌に刺激が伝わりすぎて「味蕾(みらい)」という舌の感覚器官が麻痺してしまいます。また、カプサイシンの痛みや刺激成分は、脳にとってストレスとして認識されます。脳はストレスを回避するためにアドレナリンを分泌させるのですが、アドレナリンが過剰に分泌されると脳の一部が損傷を受けることになります。このような状態になるとうつを患ったりパニック障害や睡眠障害といった精神疾患を起こしやすくなったりします。

健康な精神を保つためにも毎日大量のカプサイシンを摂取するということはやめておきましょう。